森利行デザインの装丁による記念すべき創刊號。この手は、東京都東村山市在住の当時104歳のお婆さんの手を型取りさせてもらったものということです。この皺だらけの手と近代日本の歴史を重ね合わせて考えるというのがデザインのコンセプトでした。
創刊號から二つの特集を組むという構成をとり、一つは歴史・思想などに関するもの、もう一つはサブカルチャーに関するものからテーマを選ぶという形は、今に続いています。
創刊號の目玉論文は、森利行の「試論 近代日本の社会心理について――現代美術を手がかりに」と下川みくの「京極堂覚書――妖怪小説論として」の二篇。森論文は名古屋文化振興賞評論部門入賞作をふくらませ、深化させたもので、その後の森の批評の仕事の母胎となると共に、『奇魂』同人が近代を考える際の座標軸にもなった長篇論文です。下川論文は、人気連載〈みくのミステリ研究〉の第一回で、京極ファンにも評価された快論です。
岩井繁夫・杏道あすかという個性的な絵師も創刊號から参加しています。
怪人プラム・Sのアイドル論の掲載が始まったのも創刊號でした。
高坂相「杉本章子の幕末維新小説」に対して、杉本先生から丁寧なお返事を頂いたのも記憶に残る出来事でした。
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